残念ながら毎年、カヤックフィッシングやシーカヤックでの遭難事故、死亡事故が発生しています。
登山もしかり、アウトドアアクティビティには遭難事故、死亡事故が付き物です。
遭難事故の知識を事前に得て準備することで、リスクを軽減してより安全に楽しむことができます!
まずは、海上遭難とは?事故の前例から、海上遭難を理解しリスクを知っておきましょう。
海上保安庁によるカヤック遭難事故事例
どのような遭難事故が発生しているのでしょうか?
海上保安庁が掲載している2020年度8月までのシーカヤックでの主な事故事例は以下の通りです。
参照:海上保安庁 カヌーカヤック事故発生状況
遭難事故の原因
・船位喪失による運行不能
風や潮に流されて陸地が見えなくなると、自分の位置がわからなくなり遭難します。また陸地に近い場所でも島が多数ある場所では、島の見分けがつかなくなりロストする可能性もあります。陸岸に近い場所でも、天気の急変でモヤ(濃霧)がかかると陸地が見えなくなりロストします。モヤがかかると、漁船との衝突リスクも急激に上がります。
・落水、転覆の復原不能、浸水
バランスを崩して落水、転覆してしまった後カヤックに再乗艇(乗り込めない)できない状態です。
レクリエーションカヤック界隈ではこれを沈(チン)すると言います。
特に海上設備(いけす、浮標など)を掴もうとすると、バランスを崩しやすく転覆してしまいます。カヤックから身を乗り出して何かを掴もうとする行為は大変危険です。
転覆後に危険なのは、転覆したカヤックが遠ざかってしまうこと。漂流して孤立してしまいます。
強風や波が高いことが原因で沖で転覆してしまうのは最も危険です。波風が激しいとカヤックが遠ざかってしまい、カヤックまでたどり着くことすら困難になります。波の異変を感じたら陸に戻りましょう。
また、上陸間際の波打ち際は最も沈しやすい場所です。波打ち際の波を予測しながら上陸しましょう。
シットインタイプのカヤックは、転覆後コックピット内部に入水して沈むことがありますので、フロートバッグ等を装備し万が一の沈没を防ぎましょう。
シットインカヤックでは転覆以外でも、浸水することがあります。浸水した水を吐き出すドレンポンプや専用スポンジ等を準備してください。
シットオンカヤックでも油断は禁物。出艇する前にドレンプラグや荷室の蓋がしっかりと閉まっていることを確認しておきましょう。
・パドルの紛失
最近のカヤックではパドルホルダーが付いています。カヤック側面にパドルを引っ掛けておく程度のゴム糸です。
釣りに夢中で気づかないうちに、波や作業中の反動でパドルが流される可能性があります。気づいた時には回収ができない状況に。
必ずリーシュコードをつけておきましょう。(ツーリングカヤックなど長期間、海で漕ぐシチュエーションではスペアパドルを準備しています)
・荒天による運航不能
海上の天気が変わり運行不能になる状態です。波や風が強くなり始めるとカヤックの進行速度が激減します。カヤックは少しの天気の変化に影響を受けやすいので風と波の高さには、特に注意したいところです。陸地に対して向かい風なら最悪、横風でも前に進むことが困難になります。体力の消耗も激しくなるので、波、風については常に敏感でいましょう。
風は天気予報で事前に把握しておくことができます。天気予報通りに風が強まり始めたらすぐに陸地に向かう準備をしましょう。
また他にも、モヤ、濃靄がかかると位置をロストします。濃霧がかかると漁船と衝突するリスクも高まります。魚探やスマホに内蔵してあるGPSを頼りに落ち着いてゆっくり陸を目指しましょう。
・疲労による漂流
この投稿を見ながらイメージトレーニングをすれば、再乗艇などの対処は簡単に思えるかもしれません。がしかし、実際の現場は炎天下で脱水症状、熱中症になっていたり転覆落水したとき想像以上に服が水を吸って再乗艇できなかったり、体力や意識が正常ではない想定外の時に事故はおこるものです。上陸した後の車にカヤックを積み込む体力も忘れないでください。「くたくたに疲れたから帰港」は事故の確率を上昇させます。
日焼け止めや帽子などの熱中症対策もしっかりと行いましょう。
・その他
上記資料の操船技能不足とは戻れないところまで来てしまった、又は流されてしまった等です。殆どが体力不足が原因と思われます。
事故事例12では、カヤックで島に上陸中、留めていたカヤックが波に流されてしまう事案も発生しています。島に上陸する際は、潮の満ち引きや滞在時間を考えて、波打ち際からカヤックを引き上げたり係留索をしっかりと結んだりして対策しましょう。
事故事例14では、沈した2人の仲間の転覆を救助したものの、タンデム艇の回収ができなかったか、牽引する手段がなかったと予測できます。沈した当事者は自力での帰投が困難になりますので、牽引ロープも念の為装備しておきましょう。
以上が、遭難事故がどのようにして起こりうるかの知識です。その他にも、事故につながる色々な可能性は隠れています。
人間一人の力で大自然の海に出ようものならば、それなりの知識と道具、技術が必要になるということを忘れてはいけません。
低体温症と生存時間
海水に浸っている時間は生存確率に深く関わります。以下の表は、低体温症が生命に及ぼす時間と言われています。
水温 | 意識不明に至る時間 | 生存時間 |
0℃ | 15分以内 | 15〜45分 |
1〜5℃ | 15〜30分 | 30〜90分 |
5〜10℃ | 30〜60分 | 1〜3時間 |
10〜15℃ | 1〜2時間 | 1〜6時間 |
15〜20℃ | 2〜7時間 | 2〜40時間 |
20〜25℃ | 2〜12時間 | 3時間〜 |
26℃以上は体力次第です。
季節に合わせてリスク管理を行いましょう。
安全対策の基本の基
万が一転覆してしまった際は、ひっくり返ったカヤックを元に戻し、乗り込まなければ帰港できません。
遭難に備えて、安全に練習できる湾内などで転覆してみたり、ひっくり返して最乗艇の練習をしてみましょう!
もちろん練習で事故を起こさないように、手伝ってくれたり見守ってくれる知人や仲間、家族に協力してもらいましょう。
転覆した際は、カヤックに乗っけている釣竿や小物類は沈んでしまいますので、練習では何も乗っけていない状態をおすすめします。
カヤックフィッシングに出かける前に
自宅に家族がいる場合は、事前に海から上がる時刻を伝えておきましょう。上陸したらメールやラインで安否を伝えましょう。万が一遭難してしまった場合、早期発見が生存確率を上げる重要な手段となります。
友人などカヤックフィッシング仲間と出かけるのも安全対策の一つです。仲間を作ったり、仲間間で連絡が取り合える無線機や、ワイヤレスマイクロホンを装備しておきましょう。
大勢だからといって安心してはいけません。事故事例1、2、3、4はおそらく4名のグループで遭難したと思われます。誰かが装備を持っている、誰かが位置を把握している、他人に任せることなく自身の安全装備を充実させましょう。
海上の天気予報
カヤックを出すか出さないかの判断はまずはここからです。
出発の前日から1時間おきの天気予報を把握しておきましょう。特に、風向、風速、気圧は注意して見るようにしてください。以下の天気予報は一時間おきの海上の風速等が確認できます。
・GPV気象予報👈クリックorタップ
・J-Marine Cloud 👈クリックorタップ
遭難事故を防ぐ装備
・ライフジャケット
当たり前すぎて記載しなくても大丈夫だろうと思っていましたが、念の為1番目に記しておきます。
ライフジャケット無しでのカヤックは論外、自殺に等しい行為です。ライフジャケットが無いということは、高速道路をシートベルト無しに120kmでケートラを運転するような状況です。バンジージャンプにゴムロープ無しで行おうとしていることと等しい行為です。
今ではカヤックフィッシング用に作られた、専用ライフジャケットも販売されています。
・海図チャート付き魚探
釣り目的で、海図を広げてコンパスを見ながらという訳にもいきません。海図チャート機能を備えている魚探を装備することが安全につながります。もし、魚探を装備していなかったら、陸岸から離れず沖に出ないようにしましょう。
最近の魚探はバッテリー式が多く、充電不足によるバッテリー切れ、使用時間過多によるバッテリー切れも予測に入れて魚探の稼働時間を把握しておきましょう。
・スマートフォン、無線機
スマホや無線機は防水対策を施しリーシュコードを付けて肌身離さず持っておきましょう。
GPSを利用した自分の位置確認や、118番への緊急連絡を行える最も身近な手段です。
また、アマチュア無線のハンディー無線機を利用する場合、国際VHF、CH16への非常発信はできません。アマチュア無線の非常呼び出しを利用して通報することも選択枠の一つです。
アマチュア無線のハンディー無線機は、仲間同士の連絡に重宝されます。トランシーバーだと通信距離が短いため、近距離通信しかできません。
スマホのワイヤレスマイクロホンを利用しての連絡手段もありますが、スマホの電池消耗はなるべく避けたいところです。
・リーシュコード
海で物を落としてしまったら回収ができません。落としてはいけない物には必ずリーシュコードを取り付けておきましょう。出艇前は特に、携帯電話、無線機、パドルには念を入れてチェックしておきましょう。
・ロープ、牽引ロープ
もしグループで出艇するならば、万が一に備えて牽引できるほどの長さがあるロープを備えておきましょう。
海の場合3M〜5M程の長さもしくはそれ以上の長さがあれば牽引することが可能です。
仲間の救助活動の際に必要になってくるアイテムです。
・非常食、水分
疲労による航行不能を抑制するために、非常食と多めの水分をクーラーボックスやタックルケース内に携行しておきましょう。
また、疲労が溜まってしまう紫外線対策の帽子や日焼け止めクリームも忘れないようにしましょう。
冬場は体温を逃さないようドライスーツ、ドライパンツ、ドライジャケットを装備しておきましょう。
・シーフラッグ、視認しやすい色の服装
沖合で、漁船が向かってくるシーンに出くわすことが多々あります。
漁船がしっかりと前を見ながら航行しているのか、視認されているのかが不安になるので漁船が向かってくると恐怖を感じます。また漁船の引き波が原因で転覆することもあるので、漁船が近くを通った場合引き波の大きさを見て、引き波に対して船首を立てましょう。
漁船の船主は、ぶつからなければいい精神でお構いなしに3、4M近くまで突っ込んできます。(本当に前みているのか?わざとか!?と思うほど)引き波に注意してください。
漁船との衝突事故は漁船の船主が作業しながら走らせていたり、前を見ていないことが原因で衝突事故が発生しています。
漁船への視認確率を上げるために目立つ服や目立つ色のライジャケを纏ったり、船尾にシーフラッグは必ず設置してください。
危ないと思った場合、エアホーンを装備して鳴らすのも手段の一つです。
それでも遭難してしまったら
携帯電話の電波は陸岸から数キロ届く場合がありますが、場所によっては圏外の海域もあります。
電波の状況も把握して、圏外になれば陸岸に戻るような対策をしましょう。
スマートフォンが利用できる状況で遭難してしまったら、もしくは遭難者を発見したら、
「118」番(海上保安庁)へ通報、救助要請しましょう。
救助の際、早急に場所を特定する最も有力な情報はGPSの緯度経度です。
GPSの座標を確認できる状態であれば、緯度経度を報告してください。
緯度経度の報告が海上の救助活動に最も有力な情報となります。
今のうちに、スマホ、無線機、魚探に記載してある緯度経度の表示画面を確認しておきましょう。
(緯度経度とは?緯度経度の例:
北緯 35°42′36.02″N 読み方→ (ほくい)35度42分36.02秒 ノース
東経 139°48′38.92″E 読み方→ (とうけい)139度48分38.92秒 イースト
139度48分38.92秒 小数点以下はなくても位置は割り出せるので、小数点は四捨五入して報告は39秒でも大丈夫です。
どのように位置が特定でできるかは上記の緯度経度を入力したGoogle Mapで体験できます。)
カヤックフィッシングは危険なアクティビティ?
これからカヤックフィッシングを始めようとしてこのページを見てしまい、なんて危険なアクティビティ!死ぬかもしれないからやめておこう!と思わせてしまっていたら、申し訳ございません。
しかし、大海原を釣具を持って漕ぎ出す世界はまさに人間の本能といえます。遭難リスクは登山や他のアウトドアアクティビティー同様です。
海の天気、波の状況、風の状況をしっかり把握し対処できれば、カヤックフィッシングは安全に楽しむことができる上、大物が釣れた時の嬉しさといったら帰宅して酒のツマミになるまで喜びが絶えません!リスクを知り備えることで、より安全に楽しむことができます。
是非チャレンジしてみてください!
そのほかにも、見ておくとお得なブログ記事を紹介しておきます。遭難や海難事故が少しでも減らせるようブログ記事を書きました!よかったら参考にしてください!👇
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