狩猟をする上で、切っても切り離せない問題があります。マダニです。
野生動物には、シラミやダニが沢山ついているものですが、大型の四つ足動物には、とてつもなく大量のマダニがくっついています。 そして、よく見ないと気付かないほど小さいものから1センチくらいまでのデカイマダニがくっついています。
ただのダニなら痒いだけで済むものですが、マダニが恐ろしいには理由があります。
マダニは重症熱性血小板減少症候群(SFTS)という病気を媒介しています。
”SFTSは2011年に中国の研究者らによって発表されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルスによるダニ媒介性感染症である。2013年1月に国内で海外渡航歴のない方がSFTSに罹患していたことが初めて報告され、それ以降他にもSFTS患者が確認されるようになった。SFTSウイルス(SFTSV)に感染すると6日〜2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こす。検査所見上は白血球減少、血小 板減少、AST・ALT・LDHの血清逸脱酵素の上昇が多くの症例で認められ、血清フェリチンの上昇や骨髄での血球貪食像も認められることがある。致死率は6.3〜30%と報告されている。感染経路はマダニ(フタトゲチマダニなど)を介したものが中心だが、血液等の患者体液との接触により人から人への感染も報告されている。治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはない。”
(引用:国立感染症研究所 – 厚生労働省-戸山研究庁舎https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/sa/sfts.html)
さらに、50歳以上の人間がこの病気に感染すると致死率がグンと上がるそうで、なんとも恐ろしい病気を持っているのがマダニです。 上記の文を読み返すと、コロナ然りSFTSも中国が発生源なのでは?とツッコミたくなります。
このマダニ、普段は必死にしがみついているのですが動物が死亡するとワサワサ次なる動物目掛けて動き始めます。
獲物をドメ刺しして車に乗っける時や、解体する時などマダニが車や人間に乗り移ってくるリスクが高まります。というか気づいたら既に体を這っていることが多々あります。
今までの解体は水洗いしてそのまま解体していたので、何度もマダニに噛まれたりマダニが体を這っていたことがよくありました。
海外のハンティング風景を見ていると、獲った猪や鹿をリュックのように担いでいるシーンをよく見かけ、カッコいいなぁ、やってみたいなぁと思うことがありますが、こんなこと日本でやろうものなら、全身マダニだらけで死んでしまいそうです。
今回はマダニのリスクを下げるべく、前々から気になっていた丸焼きしてからの解体をやってみることにしました。
一番安全な解体方法はマダニを死滅させるためにお湯をかける方法です。70度近いお湯だとマダニが死滅するうえ、肉へのダメージを最小限に抑えることができるそうです。
湯煎、一番やってみたい方法ですがボイラーを揃えないといけないので、今回は今ある道具を使って試すことができる丸焼きをやってみたいと思います。
おそらく、一家に一台あるであろう草焼きバーナーを使います。
この草焼きバーナーは灯油を使用、出力61,000kcal/hというとてつもない火力のバーナーです。
キャンプでよくお世話になっている安心の日本製、新富士バーナー(SOTO)さんのバーナーを購入しました。
このバーナをつかって吊り下げた猪を燃やしてみます。毛の焦げる臭いが充満しますが、不思議と美味しそうな臭いも混ざっています。
クルクル回しながら火に当てること数分。
なんということでしょう、マダニが即死、全滅です。
しかし、猪の剛毛は流石ですね。61,000kcal/hの火力でも焼き切ることができません。
毛が長い場所で1〜2センチほど残してしまいました。
焼きを入れると、毛が溶けてスライム状になったカスカスの煤が残ります。
毛が焼け縮れていく様子は、もののけ姫に出てくるタタリ神のうねうねしているモノの様です。
これを水をかけながらワイヤーブラシで落として行きます。 水をかけないと煤が飛び散って悲惨な状態になってしまいます。
この1回目の煤落としの時点で生きているマダニを発見することはありませんでした。
ブラッシングしていると、喧嘩の跡であろう牙で裂かれたキズが現れました。分厚い脂があってもこの傷の深さ…人の皮膚だったらと考えると恐ろしいです。
マダニを殺すだけならこのままでいいのだと思いますが、この状況での解体となるとやりにくい上、綺麗に丸焼きにしてみたいという好奇心で2回目の焼きを入れることにしました。
2回目の焼き入れでも、綺麗に焼ききれない部分はありましたが、なんとか毛を処理することができました。
表面だけ焼ける程度の微妙な焼き加減で全身を焼いて行きます。
表面がブクブクと焼かれて肉質が心配でしたが、解体してみると火のダメージは無さそうだったので安心しました。
水をかけながら炭を落としたら、綺麗な真っ白の猪になりました。 こうなれば解体しやすく毛がつくこともありません。
お股にしっかりと吸い付いていたマダニの残骸がありました。
そのまま精肉して食しても特に気になるところがなく、むしろマダニの脱走者や、マダニに噛まれるリスクもなく安心して解体することができ、いつも重たい毛皮がスッキリと軽くなって処理も楽になりました。
今回は厚い脂の鎧を着た猪で赤身へのダメージが少なく、結果、猪は「丸焼き後に解体する」は有効な手段だと分かりました。
赤身へのダメージが心配な鹿は、次回獲れたら試してみようと思います。
是非、マダニからのストレスをどうにかしたいと思っている猟師の皆さんは丸焼き解体法、是非試してみてください。
続きはこちら👉鹿の丸焼き!マダニ予防として有効か?丸焼きにしてから解体する方法を試してみた2 罠猟、鹿の解体